トライブリッドT3の据置蓄電池の鈍行運転の発生条件が
その日の気温に依存していそう、
とのことで温度ロガーを蓄電池周辺に置いてみました。
今回は、設置後1週間での計測結果を纏めた第一報です。
(実験レポート風に纏めてみました (^^; )
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1.目的
今回の温度計測の目的です。
(ア)据置蓄電池の鈍行運転条件を把握すること
(イ)据置蓄電池運転状態と温度の相関を把握すること
(ア)が本来の主目的ですが、その過程で(イ)も把握できればと考えています。
2.方法
今回の計測位置、方法、条件です。
(ア)各機器の配置および計測位置
まず、据置蓄電池周辺の各機器の温度に影響を与えそうな各機器の配置と、
今回の温度計測位置(A、Bの2か所で気温を計測)を図1に示します。
今回温度計測をするT3の据置蓄電池は、
我が家の東側通路にパワコンやエコキュートと並んで地面置きで設置しています。
東側通路の幅は約1.5mあり、
紙面の奥側が我が家の東面の壁、紙面の手前側には高さ1m程度の塀があります。
据置蓄電池、エコキュートの室外機は、塀の高さより低く配置されています。
この東側通路には、南方向から午前中、1hr程度日光が差し込みます。
温度計測は、T3の天板の上のA点、そこから数m離れた空中のB点、の2点で計測します。
計測器は気温計ですので、A点の据置蓄電池の温度は、厳密には蓄電池近傍の気温となります。
(イ)計測項目・方法
前項、図1の点Aと点Bで表1の計測を行います。
名称 | 位置 (図1) | 頻度 | 方法 | 備考 |
据置蓄電池周辺温度 | 点A | 1分毎 | 気温計測器 | 蓄電池ケーシング上面近傍の気温を計測 |
気温 | 点B | 1分毎 | 気温計測器 | 地面からの高さ、日射は点Aと極力同一の場所とした |
蓄電池充電量 | 蓄電池内蔵 | 1時間毎累積 | HEMS | |
蓄電池放電量 | 蓄電池内蔵 | 1時間毎累積 | HEMS |
(ウ)計測条件
表2の条件で計測を行いました。
名称 | 条件 | 備考 |
天候 | 終日快晴、終日曇の2条件 | 太陽光有無を把握 |
平均気温 | 極寒時、通常時の2条件 | 気温影響を把握 |
寸止めSOC | 20,30,40,50,70,100%の6条件 | 開始SOC影響を把握 |
余剰太陽光による充電の有無の影響を見るため、天候は快晴時と曇天時の2ケースで計測します。
鈍行運転のトリガが「寒さ」と考えており、平均気温が極寒時と通常時の2ケースで計測します。
寸止めSOCが50%よりも高いと鈍行運転になり易い記憶があるので、寸止めSOCも振って計測します。
3.結果
今回は、終日快晴、曇天で気温が通常時のデータのみ取得出来たので、
以下、その結果を紹介します。
(ア)結果サマリ
今回の計測で以下のことが明らかとなりました。
① 据置蓄電池は、充電時・放電時に発熱する。
② 充電や放電による発熱が継続すると温度上昇幅が大きくなる。
③ 晴天時21時頃の温度上昇は原因不明。
④ エコキュート運転の冷たい排気が干渉し蓄電池温度が低下する。
(イ)今後の課題
・再現性確認のための計測継続
・異なる寸止めSOC条件でのデータ取得
・より寒く・晴天条件でのデータ取得
(以下詳細)
4.結果詳細
(ア)終日晴天時の結果
この日は、終日晴天との予報だったため、
余剰太陽光を充電できるように、
寸止めSOC(朝7時の蓄電池SOC)を70%とした時の計測データです。
平均気温は比較的暖かく6℃で、蓄電池の鈍行運転は発生しませんでした。
図2から見て取れる特徴、
・据置蓄電池は夜中1時~2時に70%まで充電(グレー棒)。
・9時から余剰太陽光で据置蓄電池へ充電(グレー棒)、
12時には一杯となり、
引き続き余剰太陽光をEVへ充電(青棒)出来るほど、
終日天気が良かった。
・EV電池は23時頃に使い切るも、据置蓄電池は使い切らなかった。
・AM10時頃、蓄電池周辺温度が4℃程度上昇(青折線)
・終日、蓄電池周辺温度が、気温よりも0.5~1℃程度高い
・昼13時頃、蓄電池周辺、気温ともに2℃程度下降
(イ)終日曇天時の結果
この日は、終日曇天との予報だったため、
余剰太陽光での蓄電池充電は望めないと判断し、
寸止めSOC(朝7時の蓄電池SOC)を100%とした時の計測データです。
平均気温は比較的暖かく4℃で、曇天のために余剰太陽光の電力は無く、
蓄電池の鈍行運転は発生しませんでした。
図3から見て取れる特徴、
・据置蓄電池は夜中1時~3時で100%まで充電(グレー棒)
・曇天のため、余剰太陽光による充電(青棒・グレー棒)は日中発生せず。
・9時~15時はEV外出のため、据置蓄電池から放電(黄棒)した。
・EV電池は21時頃、据置蓄電池も22時頃には電力が枯渇。
・晴天時に見られた10時頃の蓄電池周辺温度の上昇が見られない
・終日、蓄電池周辺温度が、気温よりも1~2℃程度高い
(図1の晴天時よりも温度差が大きい)
・晴天時に見られた昼13時頃の温度降下が見られない
以上の図2、3の2日分の計測結果から、以下の現象が見て取れた。
・晴天時のAM10時頃に蓄電池周辺の温度が上昇する
・晴天時の昼13時ごろに、両計測点ともに温度が下降
・据置蓄電池周辺温度は、常に気温よりも高い(曇天時により顕著)
5.考察
(ア)晴天時AM10時頃の蓄電池温度上昇について(図2)
原因としては以下の2点が考えられます。
原因① AM10時頃にのみ日射が当たる場所なので、日射で蓄電池周囲も温められている。
原因② 充電時の分極発熱で蓄電池が温まる。
まず、原因①ですが、点Bの気温も付近で計測しており、
気温の方には日射の影響が見られていません。
同じ温度計を日向に置いておくと日射で計測温度が上昇することを事前に確認しており、
もし、点Aの蓄電池が日射で温められているなら、点Bの気温も温まる筈です。
従って、日射で蓄電池のみが温められているのは、可能性は低いと判断しました。
点Aの蓄電池計測器のみに日射があり、
点Bの気温計測器に日射が当たらなかった可能性も0ではないため、
今後も継続的に計測しておきます。
次の原因②については、
リチウムイオン電池は熱暴走時ではない通常の運転時にも熱を発生します。
その場合の熱発生のメカニズムは、以下の2種類です。
・分極発熱
充放電時の電位差で電解質が両極に分極し、
その結果、電池の内部抵抗が変化してその熱損失分だけ熱が発生します。
従って、分極発熱については、電池の充電時・放電時両方の場合に発熱します。
・エントロピー発熱
充放電時の電池内の化学反応に伴う発熱・吸熱です。
放電時に発熱して高温となり、充電時は吸熱のため低温になります。
この2種の熱発生メカニズムの内、通常は前者の分極発熱の方が支配的なので、
リチウムイオン電池は充電時も放電時も暖かくなります。
充電時は化学反応による吸熱があるため、厳密には放電時の方がより暖かくなります。
ただ、温度と言うのは、熱の入・出のバランスで決まりますので、
電池の発熱が温度計まで伝わったとしても、
その時の周囲の気温が猛烈に低かったりすると、温度計は周囲に熱を奪われるため、
結果、温度計測値はそう上昇しません。
図2で
気温よりも蓄電池周囲温度が高くなるのは、
夜中の2時頃、AM10時頃、夜20時頃です。
この内、
・夜中2時は深夜電力での蓄電池充電
・AM10時は余剰太陽光による蓄電池充電
を行っており、蓄電池内で分極発熱が発生したためと説明は出来そうです。
AM10時頃の方が、より温度上昇幅が大きいのは、
2時頃と比較して周囲の気温が高く、
蓄電池の熱が周囲に奪われ難いためと考えています。
一方で、
・夜21時は、蓄電池は放電も充電も行っておらず、
蓄電池内の分極での発熱では、この温度上昇は説明が出来ません。
もしかしたら、SOCが充分ある場合に気温が下がってくると、
T3には電池保護のために、微弱な放電による蓄電池温度の上昇機能があるのかしら?
ただ、マニュアルにはそのような記述はありません。
以上、現状では、AM10時頃の発熱や夜中の2時頃の発熱については、
充電時の分極発熱の可能性が高いです。
ただ、そのメカニズムでは夜21時頃の発熱が説明できませんので、
今後も継続的な計測を続けていきます。
(イ)晴天時、昼13時頃の温度降下について(図2)
こちらは、原因は特定できており、エコキュートの室外機からの冷たい排気によるものです。
晴天時、太陽光発電が多く余剰するため、
我が家では昼のこの時間にエコキュートの沸上運転を手動で行っています。
図1の配置図の通り、エコキュートの室外機が蓄電池の隣にあり、
冷たい排気が蓄電池の周囲に届いていることを確認しました。
このエコキュート室外機からの排気による蓄電池の冷却は、
夜間電力でのエコキュート自動運転(23時~7時)でも発生しています。
冷えすぎると蓄電池性能が低下したり、保護回路が動いて鈍行運転にもなりえるので、
真冬の蓄電池の鈍行運転は、
このエコキュート運転による室外機からの排気も一因になっているかもしれません。
こちらも継続計測します。
(ウ)曇天時、蓄電池周辺温度が気温よりも定常的に高いことについて(図3)
図3に示す曇天時の方が、図2の晴天時よりも、蓄電池周囲の温度と気温の差が大きくなります。
蓄電池運転における、曇天時と晴天時と違いは、
・曇天時は夜間電力で多く充電している(晴天時70%、曇天時100%)。
・曇天時は日中の太陽光による充電(棒・グレー)は無く、電力消費による放電(棒・黄)のみ。
以上から、
曇天時は、夜間は、夜間電力からの充電での発熱、
日中は、電力消費への放電のための発熱、
により蓄電池周囲温度が気温よりも定常的に高くなると考えられます。
晴天時と異なり、曇天時は蓄電池が定常的に充電または放電をしているため、
晴天時よりも曇天時の方が、蓄電池周囲温度が気温よりも高くなると見ています。
こちらも、継続的にデータを取得していきます。
6.まとめおよび今後の課題
以上、繰り返しになりますが、今回のまとめと今後の課題です。
(ア)まとめ
今回の計測で以下を把握しました。
① 据置蓄電池は、充電時・放電時に発熱する。
② 充電や放電による発熱が継続すると温度上昇幅が大きくなる。
③ 晴天時、夜21時頃の温度上昇は原因不明。
④ エコキュート運転時の冷たい排気が干渉し蓄電池温度が低下する。
(イ)今後の課題
① 寸止めSOCが今回の2ケースと異なる条件でのデータ取得
(寸止めSOCが50%以上だと、鈍行運転になりやすいことの検証のため)
② 平均気温が寒く(2℃以下が理想)、晴天の条件でのデータ取得
(鈍行運転時のデータ取得のため)
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以上、鈍行運転の条件は、寒くて晴天の日が未だなく、把握できませんでしたが、簡単な計測器でも蓄電池の充電時や法典時の発熱は把握できそうなことが分かりました。また、エコキュートの給湯運転が、蓄電池の温度に少なからず影響を与えていることもわかりました。
今後も、様々な条件で計測データを集めて、またここで紹介させていただきます。
では、今日はここまで!